どうして映画会社がゲームを?
日活 住田陽一Pの映画&ゲーム哲学!

 

 映画会社・日活が日本映画を世界へ売り込むことを目的に立ち上げたレーベル「SUSHI TYPHOON」。過激なホラー映画やアクション映画で世界中にカルトな人気を誇るこのレーベルが、なぜゲーム業界に参入したのか?

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 “萌え”と“刺青”を組み合わせた異色のシミュレーション「刺青の国」、プレイステーション世代泣かせの横スクロールホラーアドベンチャー「クリーピング・テラー」という、映画同様にやはり一筋縄ではいかない2作を送り出したプロデューサー・住田陽一氏に、ゲームと映画の現場の違いや今後の展望を語ってもらった。

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始めにコンシューマーを選んだ訳

――そもそも、どういった経緯でゲーム事業を始めることになったんですか?

 まず、日活に「SUSHI TYPHOON」という映画レーベルが立ち上がって、海外にスラッシャー系のエログロものの映画を売っていこうとなっていたんです。

――映画「片腕マシンガール」などが話題になっていたころで、注目が集まってきた時期ですね。

 もともと千葉※自身がゲームが大好きだから、海外に向けてゲームも作っていこうという話をしていたのですが、当時は今みたいにUnityもないし3Dで作るにしても結構予算がかかってしまうので、作りたいけどなかかなか作れないという状況だったんですね。

※千葉善紀 映画プロデューサー。日活の海外向けレーベル「SUSHI TYPHOON」の立ち上げや、「片腕マシンガール」「冷たい熱帯魚」など数々のヒット作を手掛ける。かなりのゲーム好きとしても有名。

――そこから割と時間が経って「刺青の国」「クリーピング・テラー」の2作が発表されるのですが、今回はその当時とは違った体制だったんですか?

 はじめはゲームを作るというよりは、新規事業で新しい軸を作っていかないといけない時期があったんです。その時にちょうどソーシャルゲームでシナリオやデザイナーが必要になっている時期で、受注の一部を始めたのが最初ですね。
 ただ、当時はまだガラケーの時代だったのが、すぐにスマホの時代になって、リッチコンテンツになればなるほど大変だし、リスクが大きいという話になりました。そのころSteamが少しずつ伸びてきてゲームが配信できる時代が来たというのもあって、「だったら自分たちで作ったほうがいいんじゃないか?」という話になったんです。

――そういう場合、「スマホでゆるキャラのゲーム」のような選択肢もあったと思うんですが、初手がどうして「家庭用ゲーム」での開発になったのでしょう? 家庭用ゲームは開発難度がやや高いという風に言われていたりもしますけれど。

 大きいプロジェクトに参加したときにわかったのは、ソーシャルの難しいところはオンラインのチューニングをいかにやっていくか。開発が終わったあとにも労力がかかる。もちろん、日々の上がり下がりを見るのがソーシャルの面白さだとは思いますが。

――冷静な判断ですね。

 自分がコンシューマーとPCで生きてきたので、スマホでゲームをするという文化が自分の中にはないんですよ。

――そこをきっちり認めるというのは大事なことですよね。

 あと、外から見ていると当たると大きいけど、外したときのリスクがなかなか見えないという気がしたんですね。

――そういう視点をお持ちなのは、経営というセクションでの経験からでしょうか?

 そうですね。ひとつは大きな人数を抱えなければいけないとなったときに、人件費のコストをどうするか。本業の映画の部分ですら人をどう採るかという話のときに、新規事業のほうが人が多くなってしまうと「何屋だよ!」って話になる(笑)。
 あと、スマホのネイティブを作るほうがローコストの配信ゲーよりも製作費が高いのと、宣伝費をどうするかという問題もありました。

仕様を固めこんだ「刺青の国」

――「刺青の国」はvita、「クリーピング・テラー」は3DSと、違ったプラットフォームでやってみて、感触の違いなどはありましたか?

 vitaのほうは、はじめはギャルゲーの市場がある程度あるという算段をしていました。けど、マインクラフトを遊ぶ小学生と乙女ゲーを遊んでいる女の子たちが実は強大になっていたという感じでしたね(笑)。
 3DSのほうは、値段を最後まで悩みましたね。1000円を超えてしまうとニンテンドーeショップでは結構高くなってしまうので、そこは越えないようにという。
 そういったこともあって「クリーピング・テラー」はユーザーの興味を引いたのかな、という感じはしていますね。

――2作目ということもあり「クリーピング・テラー」には、作り慣れてきたという印象もありました。

 基本的には両方とも同時に走っていました。ただ、「刺青の国」が出たのち、ちょうどTGSのときに「クリーピング・テラー」はβ2でした。そこでプレイしているところを見て、最後のフィードバックを入れて完成させました。そういう意味では、「クリーピング・テラー」のほうが最後まで調整ができたところはありますね。

――「刺青の国」はさまざまなゲームの文脈をカバーしようとしていて、「クリーピング・テラー」はピンポイントに狙いを定めているように感じました。

 逆に「刺青の国」のほうが先にがっつりと仕様を決めたんですよ。そのせいで臨機応変に動かないというところがあって、それはそれであまりよくなかったな、というところはありました。この匙加減が映像と違って難しいところですね。

© 2016 NIKKATSU CORPORATION.

© 2016 NIKKATSU CORPORATION.

「クリーピング・テラー」は「トワイライトシンドローム」や「夕闇通り探検隊」の感覚

――「クリーピング・テラー」のほうがシンプルなぶん、先に仕様を絞り込んだのかと思っていました。

 「クリーピング・テラー」はもともと横スクロールでやろうという話はしていたので、あとはどこに向かうか、という考えでした。

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©NIKKATSU CORPORATION / ©mebius.

――横スクロールというシステムを採用したのは何故ですか?

 まず、ホラーはやってみたかったんですね。その時にちょうど「P.T.」が出て、いわゆる一人称型のホラーゲームがアンリアルエンジンを使えばみんなやれますよ、みたいな感じで、海外でも「P.T.」のようなタイトルを作る人が増えたんですね。なので、同じことをやっても仕方がないと判断しました。あと、それはたぶんFPSを作ってきた人の文化だろうと思ったんですよ。
 日本的な作り方だと、横スクロールのほうが得意じゃないかなと思って突き詰めていくと、ホラーだといくつかのタイトルに絞られてくる。自分の中だと「クロックタワー」みたいなものが近いんじゃないかなと思って、作ってみたんです。
 あとは3DSで作るというのが最初にあったので、立体視を上手く出せるのは横スクロールのほうじゃないかという話になったんです。

©NIKKATSU CORPORATION / ©mebius.

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――自分の経験や思い入れをベースに、合理的に発案や決断がなされているんですね。

 革新的なものを作られるかたもいるとは思うんですけど、それは個人の才能が発揮されるからこそだと思うんです。それを自分たちの会社のなかでビジネスとして考えたとき、「Her Story」や「Papers, Please」みたいなものをうちがやりますって言っても説明ができない(笑)。
 逆に、日本が今まで作ってきたゲーム群の中から、まずは解りやすい形を出そうと考えたんです。「クリーピング・テラー」は自分たちが遊んできた「トワイライトシンドローム」や「夕闇通り探検隊」の感覚です。

――かなりマニアックですね(笑)

 当時、「あったな!」っていう感覚は大事だと思いました。だから、そこを知っている人たちが買う層になってくれたのかな。

――「クリーピング・テラー」のストーリーはリニアな感じで映画に近い部分があると思うのですが、そのあたりはどう進められたんですか?

ちょうどその時「アンティル・ドーン」を遊んでいたということもあって、最初からB級映画でいいんじゃないの、という感じでした。「バイオハザード」のように複雑なギミックが入れられないので、よくあるストーリーに落とし込んだほうが、ズレがないはずだと。

――確かに、ゲームは話が拡散しやすいので「つまりあれだよ!」みたいなモデルをいかに提示するかというのはすごく大事だと思います。

 そのどこに新しい要素を入れるのかというアイデアを出すのが難しいのですが、「クリーピング・テラー」では立体視の部分は突き詰めましたね。

 
 

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